現代日本文化のネゴシエーション インタビュー2 イェンチン研究所 2

——去る2008年、HYIの所長が杜維明からペリー教授に変わりましたが、新体制になった研究所の新たな活動やその方向性について説明していただけますか?

ペリー 軸となる活動に変更はありません。それは、アジア各国から毎年客員研究員とフェローを受け入れるというものです。HYIでは特に、このプログラムへの日本からの申請がもっと増えることを期待しています。

そのために現在HYIが行おうとしていることのひとつですが、ちょうど今年の一月、上智大学で中国史を教えているリンダ・グローヴLinda Grove教授の協力を得て、HYIが現在行っている諸々のプログラムを日本でよりよく知ってもらうための活動を始めました。グローヴ教授は、この春HYIの日本と韓国における提携機関を訪れ、 HYIの現在の活動について広報を行うことになっています。

またHYIはアジア研究に加え、人文・社会科学の他の領域の研究者もサポートしています。来年から始まる新しいプログラムでは、ラドクリフ高等研究所Radcliffe Institute for Advanced Study[ハーヴァードに属する研究所 –– SH]との協同により、特に比較研究への関心を持つHYIの客員研究員の中から、アジア研究ではない領域またはアジアとそれ以外との比較を専門とし、通常の客員研究員よりも高度な英語運用力を持つ研究者を選抜し、ラドクリフ研究所で研究活動を行えるようにしました。来年には二名のHYIの客員研究員がラドクリフ研究所で研究を行うことになっています。彼らはアジア研究を専門とするわけではないので、ラドクリフ研究所へ毎年欧米全土からやってくる学者たちと出会い、研究を行うほうがより理にかなったあり方なのです。これは新しいプログラムで、必ずしもアジア研究のみを専門とするわけではない研究者からの申請が多く来ることを期待しています。

しかしながら、HYIの主眼はあくまでもアジア研究にあることに変わりはありません。その大きな目的は、東アジアにおける人文・社会科学の高等教育を促進することです。アジアから研究者を募り、ハーヴァード大学で研究活動を行ってもらうことはひとつの方法です。そしてもうひとつの方法は、アジアにおける研究状況をアメリカにおいて広く知らせることです。そのために、HYIは客員研究員とフェロー、そしてアラムナイに対して、現在進行中の研究や、アジアで刊行された重要な学術書の書評をHYIのホームページに掲載することを勧めています。日本のアラムナイの方々にも、日本語で書かれた人文・社会科学に関する新刊の研究書の中で最も影響力を持ち、かつ日本の外の読者にとっても重要性を持つと思われる書物について、書評を寄せてもらうことを大いに願っています。

またHYIでは、HYIに関わる研究者[客員研究員、フェロー、アラムナイ]のAAS(Association for Asian Studies)の年次大会への参加を助成しています。これもやはり、アジアにおける研究者間のコミュニケーションを促進するためです。今年のAASには20名の研究者がHYIの助成を得て参加し、また自費で参加した十数名を合わせると相当な数の研究者がAASで集うことになりました。この文脈でも、日本の研究者がより活発に活動してくれることを願っています。

もうひとつ、現在計画中のことですが、AASが毎年6月に主として東京で開催する地域カンファレンス(ASCJ; The Asian Studies Conference Japan)に、HYIのパネルを出すことを考えています。日本のアラムナイの方々がパネルを計画すれば、日本のみではなく他のアジア各国からの参加者を招くことも可能です。HYIでは、このように日本のアラムナイが他のアジア各国の研究者と出会い、議論する機会を作ることを援助したいと望んでいます。費用の面でも、また交流を促進するために何らかのレセプションを行うことも可能です。

また近年、HYIではアラムナイが集うカンファレンスを毎年中国で開催してきました。しかし現在ではこれは取りやめ、代わりに、HYIのアラムナイが組織するより小規模のワークショップをアジア各地で行うことにしました。これまでにソウル、台北、ベトナムで開催されましたが、これも日本で開かれることを大いに願っています。カンファレンスは、組織者の少なくとも一人がHYIのアラムナイであれば開くことが可能で、その他の参加者はアジア各国から招いていただけます。これらのカンファレンスを通して、アジアの研究者間のネットワークの形成に寄与したいと思っています。

このように、HYIの新しい方向は全体としてより小規模で、焦点のはっきりした、多様性のある活動を目指しています。HYIの提供しているこうした機会に日本からの積極的な参加があることを大いに期待しています。

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