新刊紹介 | 編著、翻訳など | 『写真のキーコンセプト 現代写真の読み方』 |
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犬伏雅一(訳)
デイヴィッド・ベイト(著)『写真のキーコンセプト 現代写真の読み方』
フィルムアート社、2010年11月
デイヴィッド・ベイトは、ヴィクター・バーギンの下で学び、写真の思考と試行をバーギン編集の『写真を考える(Thinking Photography)』から始めたアーティスト・フォトグラファーであるが、同時にシュルレアリスム写真についての手堅い研究で学位を得た写真理論研究家である。本書は、長年に亘って実技とコンセプトの指導に当たってきた経験とイギリスの写真に関わる思考/試行についての知見を背景に、バーグ社(Berg)の教科書シリーズ(キーコンセプト)の一冊として執筆された。同シリーズは玉石混交の感があるが、ベイトの『写真』はなかなかの好著である。各章末設問など欧米の教科書フォーマット独特の蛇足感もあるが、重量級教科書で四版を重ねるリズ・ウェルズ編集の『写真(Photography: A Critical Introduction)』と比較しても写真に関わる現下の議論のコアは希釈されず、むしろウェルズのものより明瞭に浮かび上がってくる。現時点における写真に関わる英語圏の水準を俯瞰し、次のステージへ議論を深化するための書誌を含めて議論のインフラがしっかり提供されている。著者は映画理論についても精通されており、間メディア性を強く意識したデジタル・イメージ論を執筆中とのことである。(犬伏雅一)
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