新刊紹介 | 翻訳 | 『オックスフォード ブリテン諸島の歴史 17世紀 1603年-1688年』 |
---|
北村紗衣(ほか共訳)
鶴島博和(監修)、西川杉子(監訳)、ジェニー・ウァーモールド(編)『オックスフォード ブリテン諸島の歴史 17世紀 1603年-1688年』
慶應義塾大学出版会、2015年4月
オクスフォード大学出版局から刊行され、慶應義塾大学出版会から翻訳が刊行されている『ブリテン諸島の歴史』シリーズは、「英国史」をうたいつつ「イングランド史」になってしまうというこれまでの英国史研究の前車の轍を踏まないよう、スコットランド、ウェールズ、アイルランド島、そしてその他の島々を含んだ多様な地域としてブリテン諸島の歴史を包括的に論じる通史である。このたび刊行された17世紀編はエリザベス一世の死去から名誉革命までの「短い17世紀」に、政治・宗教・経済・文化などさまざまな関心から切り込んでいる。とりわけクレア・マクマナスが執筆した第六章は、英国ルネサンスから王政復古旗に花開いた演劇文化はもちろん、スコットランドの日時計やウェールズ語の出版といったそれほどよく知られていない文化事象までをカバーしており、シェイクスピア中心主義的な文化史観に一石を投じるものである。地方ごとの文化に焦点をあてた本書は、スコットランド独立の動きも見られる現在のブリテン諸島がどのような歴史的経緯を経て今の形になったのかを知る上でも有益な著作であると言えるだろう。(北村紗衣)
[↑ページの先頭へ]