新刊紹介 編著/共著 『核と災害の表象 日米の応答と証言 (エコクリティシズム研究のフロンティア)』

信岡朝子・熊本早苗(共編著)
『核と災害の表象 日米の応答と証言 (エコクリティシズム研究のフロンティア)』
英宝社、2015年3月

本書は、2012年8月に開催されたエコクリティシズム研究学会(代表・伊藤詔子)第25回年次大会で行われたシンポジアム「災害・文学・メディア」をもとに構想された共著である。同シンポジアムを契機に浮上した、「文学が、大震災と原発事故というかつて例のない複合大災害をどう捉え、どのように表象することができるのか」というテーマを軸に、上記シンポジアムの発表者、及び東日本大震災の文学的考察に関心を寄せる研究者らの手により7本の論文が執筆された。本書は2部構成となっており、第1部「核と文学」では、冷戦時代のアメリカの核戦略や、林京子、ルース・オゼキらの作品が取り上げられ、主に日本文学や環境文学の視座から核と原爆をめぐる文学的言説が考察されている。第2部「災害と言葉と表象」では、「3・11」をめぐる災害の表象に関わる論考が収められ、ナラティヴ・スカラシップに基づく震災表象や、復興過程における言葉の重要性、マスメディア的災害表象のナラティヴ構造などが論じられている。このように本書は、従来の〈核文学〉や原爆文学、環境文学の研究蓄積をもとに、災害の表象に見られる文学的虚構性と記録性の相関関係を論じる中で、東日本大震災という出来事を語り、記録する上で、文学研究がいかなる視座を提供できるのかを、多角的観点から思索することを目指している。(信岡朝子)

信岡朝子・熊本早苗(共編著)『核と災害の表象 日米の応答と証言 (エコクリティシズム研究のフロンティア)』英宝社、2015年3月