新刊紹介 編著/共著 『アメリカン・ロードの物語学』

中垣恒太郎・松本昇・馬場聡(編著)
『アメリカン・ロードの物語学』
金星堂、2015年5月

「移動」に関連するアメリカで生成された物語を「アメリカン・ロード・ナラティヴ」と規定し、25のアメリカ文学作品をとりあげて作品論を展開した。アメリカ文化において「移動」は主要なモチーフであり続けており、広大な国土、多様な地方色を背景に、蒸気船、幌馬車から自家用車、飛行機などの交通手段、映画をはじめとするメディアの飛躍的な発展に伴い、ロード・ナラティヴもまた今日まで発展を遂げてきた。アメリカ文化の幅広い枠組みの中でアメリカ文学をも取り込む文化研究の成果が近年、顕著に現れてきている。本書は文学研究の方法論に基づく25本の作品論に立脚している点、とりわけ多民族研究の観点に力点を置いている点に最大の特色がある。また、「ロード・ナラティヴ・ガイド」として映画・音楽を扱うコラムを配し、今後の研究の可能性を展望する姿勢を示した。この領域では後発となることもあり、幅広さを志向するものであったが、網羅的に掌握することは不可能であり、しかるべき作品が「年表」で脱落してしまうなど反省点も多い。アメリカ文化における「ロード」の概念は今後も私たちの想像力を大いに喚起するものであり、本書の試みもまた「旅の路上」としてさらなる研究成果に接続できればと願ってやまない。(中垣恒太郎)

中垣恒太郎、松本昇、馬場聡(編著)『アメリカン・ロードの物語学』金星堂、2015年5月