新刊紹介 | 単著 | 『“列島”の絵画 「日本画」のレイト・スタイル』 |
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北澤憲昭(著)
『“列島”の絵画 「日本画」のレイト・スタイル』
ブリュッケ、2015年6月
二十世紀の美術における「絵画」の概念の解体の行方について日本画の「レイト・スタイル」(晩期でありながら最新ゆえに、時代への抵抗として存在しうる)を「いま・ここ」における重要課題として問い直す、著者によるとおそらく最後の日本画論集である。I「日本画」の可能性、II「書画」の現在性、III「日本画」のレイト・スタイル、IV 諏訪直樹論の四部構成。
中国大陸などの影響を受けながら、明治期以降は西洋の概念として移入された「美術」や「絵画」として発展してきた「日本画」は、まさにクレオール絵画と呼ぶに相応しい。近代国家として「国民精神」を培う役割を担ってきた日本画は今、どこに向かおうとしているのか。絵画というジャンルの問い直しがなされた二十世紀において、純粋な芸術のあり方を志向した西洋のモダニズムとは異なる仕方で、日本では反芸術的な志向や「平面」との関わりが問題化された。一点透視法を採用する西洋近代のタブロー絵画が導入される以前の形式を持つ屏風や襖などの「ゑ」、または、近代化の過程で「美術」から切り離された「書」やフェノロサの芸術感により排斥された文人画=南画など。そこには、額装された自律的な絵画、ひいては、作者の主体存立を前提とするモダニズムと対抗しうる「日本画」の可能性が秘められている。
本書の標題の〈列島〉は、エドゥアール・グリッサン著『全‐世界論』に由来しているが、〈列島〉的思考とは、「同一性」ではなく「関係性」のなかに身を置くことであるという。グローバリゼーションにより複合化された社会、つまりクレオール化のなかで、クレオール絵画としての日本画は「世界の複数の現存」を受け入れる現場たりうるのか。日本画のラディカルな「レイト・スタイル」を本書は紐解いてみせる。(井戸美里)
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