新刊紹介 単著 『「超」批評 視覚文化×マンガ』

石岡良治(著)
『「超」批評 視覚文化×マンガ』
青土社、2015年4月

2005年から現在まで、約十年の間に批評誌『ユリイカ』(青土社)に発表された論考から、マンガを対象に据えたものを中心に13本を集成した、著者にとって二冊目の書物である。前作『視覚文化「超」講義』(フィルムアート社、2014年)に続き、「超」の文字をタイトルに冠することで、狭い意味での学術的な構えを取り払い、批評の対象を自在に論じていく。そこには、中心となるマンガだけでなく、テレビアニメ作品である『魔法少女まどか☆マギカ』、テレビの特撮ものである『仮面ライダーディケイド』、あるいは安倍吉俊のイラストレーション、さらには伊藤若冲の動植綵絵にいたるまで、多様なジャンルとメディアが含まれており、この一冊を通読するだけでも、領域をまさに「超」えていこうとする著者の姿勢が感じ取れる。

それぞれの論考に初出時からの大きな改稿は施されていないが、単に発表年の順に並べるのではなく、現在の著者の視点から三部構成にまとめ直された目次は、「形象」「媒介性」「神話」という三つの鍵概念を提示しており、著者の関心が多岐にわたりつつも一貫したものであったことを伝えている。前作『視覚文化「超」講義』が、それらの関心をトピックごとに論じた書き下ろしの基礎編であったとすれば、本書は個別具体的な作品に寄り添いつつ、それぞれの概念の自由な発展を試みた応用編と呼べるかもしれない。合わせて読むことを推奨したい。さらに付言するなら、前作と本書の問題意識をブリッジする議論として、『表象』09に収録の小特集「マンガ「超」講義-メディア、ガジェット、ノスタルジー」も併読されたい。(三輪健太朗)

石岡良治(著)『「超」批評 視覚文化×マンガ』青土社、2015年4月