新刊紹介 編著、翻訳など 『映画の身体論』

『映画の身体論』
塚田幸光(編著)
ミネルヴァ書房、2011年10月

映画はいかに「身体」を描いてきたのだろうか。スクリーンが隠蔽/開示(イン・アウト)する身体とは、文化的、社会的に構築される差異としての「身体」に他ならない。性やジェンダーや人種に接続する身体として、或いは国家的イデオロギーや政治的メタファーを逆照射する表象/身体として、「身体」が包摂する領域は限りない。明滅するスクリーンの向こう側から呼びかける俳優の身体、そしてそこに同一化する観客の身体も忘れてはならないだろう。映画と身体との関係は複層的であり、その関係性は、網状のテクスト/コンテクストの中でキメラの如く変化する。

本書は、映画と身体をめぐる表象/言説を8つのアスペクトから分析、考察している。堀潤之(ゴダール)、山本秀行(ブルース・リー)、川本徹(カウボーイ)、名嘉山リサ(ブラックスプロイテーション)、吉村いづみ(原節子)、小川順子(市川雷蔵)、松田英男(戦中ミュージカル)、塚田幸光(ニューシネマ)。身体と表象。当然のことながら、この考察に終わりはない。本書はその試みの一例に過ぎない。(塚田幸光)