新刊紹介 編著、翻訳など 『映画のなかの社会/社会のなかの映画』

堀潤之、御園生涼子(分担執筆)
『映画のなかの社会/社会のなかの映画』
杉野健太郎(編著)
ミネルヴァ書房、2011年12月

本書は、10巻にわたる刊行が予告されている「映画学叢書」の第3巻目にあたる論文集で、日本映画学会会員を主な寄稿者とする10本の論考が集められている。映画作品が「社会」をどのように映し出してきたのか、あるいは逆に「社会」が映画という制度にどのような制約を課してきたのか。合わせ鏡のようなこの二重の問いかけは、日本からアメリカ、フランス、ドイツまで、サイレント期から現代まで、人種表象や検閲制度から多文化主義まで、多岐にわたるテーマが取り上げられている本書の導きの糸となるだろう。もとより論文集なので、緊密な統一性は望むべくもないが、見たところ懸け離れた論文間に思わぬ問題意識の通底を見いだすという悦びは、それぞれの読者にゆだねられている。(堀潤之)