新刊紹介 | 編著、翻訳など | 『ヴィデオ――再帰的メディアの美学』 |
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イヴォンヌ・シュピールマン(著)
『ヴィデオ――再帰的メディアの美学』
海老根剛(監訳)、柳橋大輔・遠藤浩介(訳)
三元社、2011年
待ち望まれたイヴォンヌ・シュピールマンのヴィデオについての著作の翻訳が発表された。本書の原著となる『Video. Das reflexive Medium』は、2005年に発表され、その3年後には英訳書が出版されている。発表から未だ10年も経ってはいないが、『ヴィデオ』は既に、映像研究のみならず、メディア論、美学・芸術学、哲学、視覚文化研究など、様々な領域においてヴィデオに関する基本文献として確固たる位置付けがなされている。というのも、ヴィデオに関してこれほどまで体系的に論じた著作は類を見ないからだ。
本著作において、著者はまず、ヴィデオと隣接するメディア(映画、テレビ、コンピュータ)との比較からヴィデオの独自性をあぶり出し、それを再帰的プロセスとして位置づけ(第一部「テクノロジーそしてメディアとしてのヴィデオ」)、次に再帰的メディアとしてのヴィデオの主要な三つの流れ――ドキュメンタリー・ヴィデオ、芸術ヴィデオ、技術的―美学的ヴィデオ――から、ヴィデオの語彙と制度を探求する(第二部「再帰的メディア」)。以上の議論と視座を踏まえ、最後に著者は、数多くのヴィデオ作品との対話を行い(第三部「ヴィデオ美学」)、ヴィデオの展望として「複雑性とハイブリット化」を導き出す。それは単にヴィデオ=メディアだけではなく、現代の社会や文化への展望でもあると言えよう。(松谷容作)
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