新刊紹介 単著 『「なぜ?」から始める現代アート』

長谷川祐子
『「なぜ?」から始める現代アート』
NHK出版新書、2011年11月

一般に「現代アート」と称される一連の作品は、奇妙奇天烈な対象として、難解なものとして、アンタッチャブルな領域にあるものと考えられている。だから、少なくとも日本では、タレントやミュージシャンや生物学者や脳科学者が、現代アートについてもっともらしい解説を添え、それでよし、ということになっている。アンタッチャブルな領域にある難解な代物については「言ったもん勝ち」であり、これに対する批判などてんから起こりようもないからだ。

本書は、そうした「文化人」の解説とはまったく異なる視点から、実際に現場で作品と関わるキュレーターによって書かれたものである。村上隆からフセイン・チャラヤンまで、絵画からランド・アートまで、技法からメディウムまで。具体的な作品を挙げつつ現代アートをめぐる問題を縦横無尽に記述していく著者長谷川祐子の筆には、あらかじめ「一貫性」というものを拒絶しているかのようなところがあるが、それもまた現代アートの状況を表しているのだろう(か?)。少なくとも、第一線で活躍するキュレーターがどういった視点で、立場で、感覚で展示を組んでいるのか、その一端を垣間見ることができる本である。(井上康彦)