新刊紹介 | 単著 | 『一般意志2・0 ルソー、フロイト、グーグル』 |
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東浩紀
『一般意志2・0 ルソー、フロイト、グーグル』
講談社、2011年11月
「夢を語ろうと思う」と書き起こされる本書が最終的に喚起するのは、たとえばニコニコ動画のようにコメントが流れるスクリーンに囲まれた国会、という一見すると拍子抜けするような場面だ。しかしこのシンプルな結論に達するまでの道のりは、紛れもない思想書の足取りとなっている。
出発点にあるのは「熟議」モデルの失効という認識だ。現代社会では徹底した熟議は原理的に不可能であるという身も蓋もない事実。この困難を補う技術的可能性として象徴的に挙げられる名がグーグルである。そしてデータベースから抽出されるという「一般意志2・0」は、政治の最終審級ではなく、フィードバック装置として熟議に連接されるものとして構想される。
このアイデアは、ルソーやフロイトといった思想家たちが残したテクストの襞に徹底して沿って展開される。著者東浩紀は古典的テクストへと深く潜ることで、現在の困難に立ち向かっていくための思索線分群をきわめて大胆に取り出してくる。本書が示しているのは人文学のそのような一つの基本姿勢であり、「一般意志2・0」とは、技術的に実装化可能な一つの未来像であると同時に、そこで取り出された思索線分群が指し示している、今こそ思考されるべき開かれた課題の名である。(谷島貫太)
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