座談会 | ページ4 |
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学会誌『表象』刊行記念座談会
「新しいアソシエーションの形をもとめて」
桑野 隆(早稲田大学) | 中島隆博(東京大学) |
門林岳史(日本学術振興会特別研究員) | 宮崎裕助(日本学術振興会特別研究員) |
佐藤良明(広報委員会=司会) |
宮崎 人文学の退潮ということが言われますけど、実際に人文知への興味が失われているという実感は僕にはありません。人文科学の閉塞とは言っても、人文学をやっていこうとしている人は数的に依然多いですし、自分と近い同世代の人たちをみても、個々にいろいろ面白いことをやろうとしている人はたくさんいます。にもかかわらず、大学内部の秩序や規範化された既成の学問との折り合いのなかで、妥協を余儀なくされているところがあるんだと思うんです。せっかく面白いことをやりだしても、それがエンカレッジされることなく、「やっぱり無難な線でいくか」というふうに、探究の方向が修正されてしまう。それも上からの抑圧でそうなるというより、なんとなく自主規制が働いてしまうような雰囲気を感じます。そういうトラップがいろんなところにあって、それと知られることさえなく、可能性の芽をみずから摘んでしまうことにつながっているという印象があります。
佐藤 かほどに「敵」は重いということですね。重量感はないのに、動かない。もう世間が不思議がっていますよ。あれだけ優秀なやつが、大学院に行ったばかりに、同級生が課長になる歳になってもまだ就職もできないって。一方では「動かない」人たちが停年までポストに居すわっている。それがどれだけ日本の損失になっているか、もう気づかれていいころですね。気づかせないといけないね。
中島 静かな怒りが充満しているはずなんですよね。それをもう出していいんじゃないでしょうか。これは新しい怒りなもので、その怒り方というのが、まだ獲得されていない。それを獲得することによって<表象>の可能性が、また別次元に開けていくんだと思います。
(2007年5月16日、東京大学駒場キャンパスにて)
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