新刊紹介 | 単著 | 『マーク・トウェインと近代国家アメリカ』 |
---|
中垣恒太郎
『マーク・トウェインと近代国家アメリカ』
音羽書房・鶴見書店、2012年3月
2010年秋、米国新聞各紙に発表された新刊リストを見た者は、そこに1世紀以上を経て親しみのある名前が帰還したことに深い感慨を覚えたに違いない。マーク・トウェインである。はたして『自伝』の第1巻(三巻本の予定)は飛ぶように売れ、根強いトウェイン人気を印象付けた。
このようなトウェイン熱の高まりの中で出版された中垣氏の新刊はきわめて重厚かつ着実な研究で、20に及ぶ章で一つ一つの作品を扱いながら、19世紀後半のアメリカの国家形成プロセスとの関連を解き明かしている。取り上げられているトピックは多様である。フロンティア文化、SF的想像力、中世的なものの幻視、疑似科学、国内外の放浪、アメリカ文化人類学、知的財産権、老いと少女愛など、入れ替わり立ち代り様々なテーマが現れて興味が尽きない。膨大な注釈や文献リストは、本書の学術的厳密さを証しだてるだろう。トウェイン作品の幅の広さと歴史的重要性を教えてくれる書物である。(高村峰生)
[↑ページの先頭へ]