新刊紹介 編著、翻訳など 『祭壇画の解体学ーーサセッタからティントレットへ』

喜多村明里・金井直ほか(共著)
遠山公一(責任編集・著)『祭壇画の解体学ーーサセッタからティントレットへ』
ありな書房、2011年4月

「イメージの探検学」シリーズ第2冊にあたる本書は、初期ルネサンス~マニエリスム期のイタリアが生んだ祭壇画の主要作例6点(画家サッセッタ、マンテーニャ、ラファエッロ、ブロンツィーノ、ティツィアーノ、ティントレット作)を、6人の美術史学研究者がそれぞれ詳論する。キリスト教美術における表象の一形式として、「祭壇画」に人々は何を求め、何を看取っていたのか。解体されていた多翼式祭壇画を甦らせようとするとき、研究者はそこに何を見ているのか。卓越した画家による構想や手わざを得て、聖堂や礼拝堂空間のうちに生成され顕現する聖性の表象としての祭壇画の意義、祭壇画それ自体の形式と機能とをめぐり、多様な視点のもと最新の知見を交えて論考する各章は、まさに「祭壇画」のすべてを解体し、果敢にその価値を探るものといってよいだろう。15世紀の信仰・祈りと人文主義との融合から生まれた「古代風」祭壇画の内実、16世紀マニエリスムの美的洗練、彫刻と絵画のパラゴーネのもとで描かれた「彫刻を模す」がごとき祭壇画と礼拝堂装飾、さらには宗教改革期における〈聖母被昇天〉祭壇画像の変容など、拙著部分はさておくとしても、思わず引き込まれる深い「祭壇画論」である。(喜多村明里)