新刊紹介 | 編著、翻訳など | 『ジョルジョ・モランディの手紙』 |
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岡田温司(編訳)
『ジョルジョ・モランディの手紙』
みすず書房、2011年4月
故郷の街ボローニャで妹たちと一生涯暮らし、テーブルに並べられた壜や花瓶や器や身近な風景を描き続けた独身の画家ジョルジョ・モランディ。彼の手紙は、その作品の印象と違わず慎ましいものである。 第一部では、美術批評家たちと交わされた芸術家の書簡に、編者岡田温司による詳細な註が付されている。戦中戦後の前衛と激動のさなかでモランディは、落ち着きや静謐さを芸術と生の信条としたのだ。
第二部では、同時代人の批評やインタビューを、訳者の意欲的な解説付きで編纂している。この寡黙な画家を語ろうとする切り口は意外なほど広い。初期の批評に指摘される色調と意識の流れ。近代建築と類比されるヴォリュームの地質学的構築性。ポップ・アートにもつながるありふれた事物への注意。アンフォルメルを先取りするかのような形態の揺らぎ。モランディは、戦後ヴェネチア・ビエンナーレの運営委員に加わったことからも、同時代の芸術動向に目配りを効かせていたことは確実である。しかし、無用な芸術論争に巻き込まれることも避け、自己イメージを抑制しようともしていた。平穏さに執着する頑固なまでのモランディの口調は、現在ますます静かに重く響いてくる。大災害の影響で延期されてしまったモランディ展の日本での開催を、本書を読みながら待ち続けたい。(石谷治寛)
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