新刊紹介 編著、翻訳など 『ヨーロッパ・ジェンダー文化論――女神信仰・社会風俗・結婚観の軌跡』

伊藤誠宏・森貴史(分担執筆)
『ヨーロッパ・ジェンダー文化論――女神信仰・社会風俗・結婚観の軌跡』
明石書店、2011年4月

これまでのヨーロッパ史は、父権的なキリスト教文化を基盤として、おもに男性中心主義の視点で記されてきた。そのため、中世、近代、現代史の記述はたいてい、教皇、国王、統治者などの支配する側からの史観に依拠して展開されるものであった。

しかし、古代における女神信仰、シヴァの女王伝説、アマゾネス神話など「異教」的女性像がヨーロッパの基層をなす地中海文化に大きく影響したという事実にくわえて、キリスト教化がなされた以降にも、男性中心の宗教・倫理観のなかに、中世のミンネの思想、マリア信仰が存在していたり、フランス革命に触発された近代フェミニズムは女性解放運動の前史として確認されるだろう。以上のことから、本書は、ヨーロッパ史における男女のあり方を再検討し、各時代ごとの各論を、以下のテーマで展開するものである。

キリスト教化以前の地中海とオリエントの女神信仰(第1章)、リリト、メドゥーサ、マグダラのマリアなどから考察する女性原理の魔女化と聖女化(第2章)、近代ヨーロッパの父権制における結婚(第3章)、グリム『メルヒェン集』のジェンダー(第4章)、17、18世紀のフランス植民地(第5章)、フランス革命とナポレオン法典の結婚問題(第6章)、現代ヨーロッパのジェンダー事情(終章)。(森貴史)