新刊紹介 | 編著、翻訳など | 『アンチ・オイディプス草稿』 |
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國分功一郎・千葉雅也(訳)
フェリックス・ガタリ(著)/ステファン・ナドー(編)『アンチ・オイディプス草稿』
みすず書房、2010年1月
1972年に姿を現した『アンチ・オイディプス』は、その執筆方法を巡って様々な臆測を呼んだ書物である。同書はジル・ドゥルーズとフェリックス・ガタリの共著となっており、表紙には二人の名前が記されている。だが、どこをどちらが書いたとも書かれておらず、また二人ともこの本の執筆の実際について多くを語ろうとしなかった。いったいどのようにして「二人で書くécrire à deux」という実践が達成されたのかは謎のままだった。
『アンチ・オイディプス草稿』は、読者を『アンチ・オイディプス』の生成の現場へと臨席させつつ、この謎に明快に答えてくれる書物である。同書を編集したステファン・ナドーによれば、この「共著」は次のように書かれた。――ガタリが毎日アイディアを紙に書き付け、それを推敲せずに封をしてドゥルーズに送る。ドゥルーズは毎日届くガタリの「草稿」を読み、使えそうなものをピックアップしていく。ドゥルーズの中でガタリのアイディアが一つのまとまりをもって具現化した時、ドゥルーズが一気にそれを書き起こす…。
今回翻訳されたのは、ガタリがドゥルーズに書き送っていたテクストをナドーが独自の視点でテーマ別に編集し直したものである。『アンチ・オイ ディプス』はこのテクストの山から生成した。ならば、読者はこのテクストの山からまた別の『アンチ・オイディプス』を生成させることができよう。ドゥルー ズ=ガタリによれば本は道具箱である。それを使って何を作れるか。「唯一の基準は「それがうまく動く」かどうかだ」(『草稿』、三六頁)。(國分功一郎)
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