新刊紹介 | 編著、翻訳など | ジョルジョ・アガンベン『イタリア的カテゴリー――詩学序説』 |
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岡田温司(監訳)
ジョルジョ・アガンベン『イタリア的カテゴリー――詩学序説』
みすず書房、2010年4月
ジョルジョ・アガンベンがイタロ・カルヴィーノやエルサ・モランテといった作家たちと親交があったことは、比較的知られている。とはいえ、詩や小説がどれほどアガンベンの思索にとって本質的なものなのか、また詩や小説がどれほど人間に不可欠なものとしてアガンベンによって考えられているのかについては、ともすれば看過されがちなようにも思う。
本書はアガンベンの文学批評を集成したものである。初版は1996年。2010年に増補新版が上梓され、それからほどなく日本語版が刊行された。13世紀のダンテ・アリギエリから21世紀のアンドレア・ザンゾットまで、ゆうに8世紀にもおよぶイタリア文学の数々が繙かれていく。モランテが残したちょっとした書き込みから、人間と動物をめぐる問題に踏み込んでいく「隠された財宝の祝祭」、アルノー・ダニエル(ほか)の晦渋な詩を、中世の聖書解釈学における四層の意味〈ヒストリア/アレゴリア/トロポロギア/アナゴギア〉にそって読み解いていく「コルン」など、アガンベンの示唆に満ちた着想、いつもながらの透徹な視線、ふだんより凝った文彩をゆっくりと愉しめる書物になっている。(岡本源太)
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