新刊紹介 | 単著 | Kensuke Kumagai "La Fête selon Mallarmé : République, catholicisme et simulacre" |
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Kensuke Kumagai "La Fête selon Mallarmé : République, catholicisme et simulacre"
Paris, L’Harmattan, 2009
熊谷謙介氏の『マラルメによる祝祭――共和国、カトリック、虚像』は、2006年にパリ第4大学に受理された同氏の博士論文の書籍版である。
フランス語で500ページを超えるこの大著には、「マラルメによる祝祭」という表題が冠されている。おそらく今日の読者にとって、演劇批評家としてのマラルメの顔は――つい先頃完結をみた筑摩書房の『マラルメ全集』などを通じて――すでにある程度知れ渡っているだろう。しかし、ここで問題となっているのは、「演劇théâtre」ではなく「祝祭fête」である。なぜ「祝祭」なのか――そのような読者の疑問に答えるかのように、本書はこの「祝祭」という主題が、文学や芸術は言うに及ばず、政治や宗教といったマラルメの多様な思考を綜合的に考察するためのキー・コンセプトであることを、丁寧に、かつ刺激的な仕方でわれわれに提示してくれる。
2010年7月に京都造形芸術大学で催された「マラルメ・プロジェクト 21 世紀のヴァーチュアル・シアターのために」をはじめとして、マラルメの姿を今日あらためて捉え直そうとする試みは今後ますます活発なものとなっていくだろう。本書は、マラルメを今日再読せんとするそのような読者たちにとっての不可欠な参照項となるはずである。(星野 太)
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