新刊紹介 |
---|
白井 雅人ほか(編)
『メディアアートの教科書』
フィルムアート社、2008年03月
本書はタイトルの通り、メディアアートをこれから学ぼうとする初学者向けに編集された教科書で、関連分野を含めたメディアアートの歴史を辿り、美術・技術・思想などの背景を概観し、実際の作品制作に向けた演習を試み、用語集や年表などを資料としてまとめたものである。この分野の日本語によるまとまった概説書としてはほぼ初めてのものとなる。
ここでは各論を集成することによらず、基礎的事項や必須の周辺知識をできる限り体系的網羅的に提供するというモダニズム的ともいえる編集手法が採用されている。教科書と参考書を兼ねた書として、結果的に読者の知的好奇心に対してそれなりの新鮮な刺激を与えることになっているのではないか。
メディアアートは、大きな発展をみせたと考えられている1990年代前半以降、アーティストによるその制作実践が世界的に続けられているわけだが、現在まで十分にその市民権を確立したとはいえない状況にある。テクノロジーとの関わりという側面を必然的に内包するがゆえに、その活動が技術を後追いし、あるいは産業サイドから取り込まれてしまっていると断罪されもする。こうした現況においてメディアアートをアートとして再確認する本書の作業が、今後のメディアアートの新たな展開の可能性を示唆するものとなることを期待する。(白井雅人)
[↑ページの先頭へ]