新刊紹介 |
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國分 功一郎(訳)
ジル・ドゥルーズ『カントの批判哲学』
ちくま学芸文庫、2008年01月
ドゥルーズがまだ著作を発表し始めたばかりのころに書かれた、カントについてのモノグラフィー。『純粋理性批判』『実践理性批判』『判断力批判』の織りなす巨大な体系を、理性・悟性・構想力という諸能力の組み合わせの変化によって作動する一つの置換体系として、驚くほどコンパクトにまとめ上げる。
とはいえ、これは、「カントの批判哲学」を要約した、単なる教科書ではない。置換体系として描かれることで明らかになるのは、この体系が諸能力の一致、すなわち共通感覚によって機能しているということ、ここにこそこの体系の基礎があるということである。ドゥルーズは、この基礎があくまでも前提されたものである点にこだわり、カント哲学の限界を明らかにしようとする。
ドゥルーズはカントを自らの「敵」と呼んだが、本書はまさしくその「敵」を、論じつめることで乗り越えようとする企図の記録であり、その後のドゥルーズ哲学の展開を決定的に規定したものである。スピノザ主義——ドイツ観念論では「独断主義」と呼ばれた——との関連で論じられることの多いこの哲学者が、どれほど批判哲学によってその思想を決定づけられていたか。読者は改めてその点について考えさせられることになろう。
新訳。訳者の詳細な解説が付されている。(國分功一郎)
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