新刊紹介 翻訳 『1913 20世紀の夏の季節』

山口裕之(訳)
フローリアン・イリエス(著)
『1913 20世紀の夏の季節』
河出書房新社、2014年12月

1913年は、第一次世界大戦の前にヨーロッパの19世紀的な価値観がまだ保持されていた「昨日の世界」(シュテファン・ツヴァイク)の最後の年であるとともに、すでに芸術・文学におけるアヴァンギャルド運動がさまざまなかたちをとって劇的に展開していた年である。ニューヨークでの「アーモリー・ショー」、ストラヴィンスキーの『春の祭典』の初演スキャンダル、プルーストの『失われた時を求めて』第一篇の刊行、デュシャンの『自転車の車輪』といった、この年のエポックメイキングな出来事はその最も典型的な例である。

本書ではそういったさまざまな出来事が、かなり短めの断片のモザイク的集積というかたちで語られてゆく。著者のフローリアン・イリエスは美術史を専攻した後、ドイツの代表的新聞『フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング』、『ツァイト』で「文芸欄(フェイトン)」を担当していた。そういった関心から、本書では美術と文学に関する記述(とりわけドイツ表現主義とその周辺)がある程度の割合を占めている。しかも、語られているのはかなり個人的な領域である。それとともに、さまざまな歴史的出来事の瑣末とも思われる情景が描写されてゆく。それらによって、第一次世界大戦へと突入していった100年前のヨーロッパの知的状況が、文化史・歴史として語られるものとはまったく異なるイメージをともなってパノラマのように描き出されていく。(山口裕之)

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