新刊紹介 編著/共著 『労働と思想』

清水知子、宮﨑裕助(分担執筆)
市野川容孝、渋谷望(編著)『労働と思想』
堀之内出版、2015年、1月

都内の大学生と若手社会人らによってNPO法人POSSEが結成されたのは2006年のこと。それから10年ちかく、POSSEは年間およそ1000件におよぶ労働相談、生活相談を受け、派遣切り、生活保護、ブラック企業等の様々な労働問題に実践的に取りくんでいる。本書は、その活動の一つである雑誌『POSSE』の「労働と思想」コーナーに連載された22人の思想家の論考を一冊にまとめたものである。

本書をユニークなものにしているのは、シェイクスピアからロック、ルソー、ヘーゲル、マルクス、デリダ、ラカン等々、近代資本主義の勃興期から現代に至るまで、多彩な思想家の議論を「労働」という切り口から読み解き、労働や資本主義をめぐる多様な視点を浮かび上がらせていることである。もちろんそれは労働をめぐる諸問題のすべてではない。しかし本書は、彼らがどのように資本主義に向き合いオルタナティヴな社会を構想してきたのか、また私たちはいかにして労働が人間の条件の中心を占める社会から自身を解放することができるのかといった問いに対し、開かれた議論を展開し、「労働」について考える数多くのヒントを与えてくれる。

『POSSE』の「労働と思想」コーナーはいまなお続行しているので、まずはその第一弾としてぜひ手にとってほしい一冊である。(清水知子)

清水知子、宮﨑裕助(分担執筆)市野川容孝、渋谷望(編著)『労働と思想』