新刊紹介 | 編著/共著 | 『キュレーションの現在 アートが「世界」を問い直す』 |
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金井直、星野太(分担執筆)
『キュレーションの現在 アートが「世界」を問い直す』
フィルムアート社、2015年2月
キュレーションという言葉が、さまざまな情報の収集・選別・供給に関わる営為として、広く喧伝されるようになって久しい(そのひとつの火付け役となったのが、佐々木俊尚『キュレーションの時代』ちくま新書、2011年だろう)。だが本書は、そうした「キュレーション」という言葉の拡散を念頭に置きつつも、あくまで「アート」におけるキュレーションを対象としながら、その「現在」を見据えるという趣旨のもとに編まれた一冊である。
本書の執筆者の多くは、美術館をはじめとするさまざまな現場で活躍する国内のキュレーターであり、現場での実践に裏打ちされた彼らの言葉は多くの点で示唆に富む。また、キュレーションという言葉が氾濫する昨今の状況に鑑みて、20世紀後半から今日までのキュレーションの歴史(時代を画したキュレーターおよび展覧会)が過不足なく整理されていることも特筆に値する。巻頭の椹木野衣と五十嵐太郎による対談は、これまで歴史的に語られることが相対的に少なかった1990年代以降の──主にインディペンデントな──実践が数多く紹介されているという点で興味深いものであるし、巻末の蔵屋美香、黒瀬陽平、新藤淳、松井茂による座談会では、キュレーションという営為の背後に潜む歴史的・思想的な課題が俎上に載せられており、狭義の美術にはとどまらない、充実した議論が展開されている。(星野太)
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