新刊紹介 編著/共著 『女性の表象学 レオナルド・ダ・ヴィンチからカッリエーラへ(イメージの探検学)』

金井直(ほか共著)
『女性の表象学 レオナルド・ダ・ヴィンチからカッリエーラへ(イメージの探検学)』
ありな書房、2015年1月

本書は、イタリア美術史に関わる研究者4人が、それぞれレオナルドの《モナ・リザ》、ティツィアーノの《聖愛と俗愛》、カラヴァッジョとジェンティレスキの《ホロフェルネスの首を刎ねるユディット》そしてカッリエーラの《自画像》などを取り上げながら、イタリア美術史を彩る女性表象の特質と魅力を説くものである。章ごとに読み分けていただいても良いが、眼差しや婚姻、画家の女性観や職業画家としての女性といった観点から、複数の章をつなぎつつ縦覧していただくのも好ましい。15〜18世紀の女性表象の多様が、近年の研究動向もふまえつつ、的確に、そして鮮やかに示されよう。

本書の構成について。ルネサンス・バロックの画家たちに複数の章を割りあてることは当初より決まっていたのだが、筆者はここにロザルバ・カッリエーラ(1673-1757)の章を付け加えてみた。様々な要因が重なって、過小評価気味(日本語文献はほぼ皆無である)の彼女の“再発見”を目論んだものである。加えて、解題という体裁で、近代イタリアにおける女性表象の問題を、墓碑彫刻と分割主義絵画を絡めつつ略述した。なじみのチンクエ・セイチェント美術史の内部に女性表象の問題を留めおくことなく、少しでも、われわれの生きる「いま/ここ」に、時間的かつ問題の性質において近づける試みである。併読していただければと思う。(金井直)

金井直(ほか共著)
『女性の表象学 レオナルド・ダ・ヴィンチからカッリエーラへ(イメージの探検学)』