新刊紹介 翻訳 『ニューメディアの言語 デジタル時代のアート、デザイン、映画』

堀潤之(訳)
レフ・マノヴィッチ(著)『ニューメディアの言語 デジタル時代のアート、デザイン、映画』
みすず書房、2013年9月

マノヴィッチの名を一躍高らしめた『ニューメディアの言語』(原著2001年)は、文化のあらゆる局面でデジタル化が急速に進行し、コンピュータをはじめとする各種デジタル機器やインターネットが爆発的に普及した1990年代における「ニューメディア」の美学的な諸相を広範囲にわたってマッピングした書物であり、今でもなお、デジタル時代の文化と芸術を論じる際の欠かせない参考文献でありつづけている。

訳者としては、刊行後十年以上経った本を手がけることに迷いがなかったわけではないが、2000年代以降の英語圏における新しいメディア研究の刺激的な動向がわずかしか紹介されていない日本の現状に、ささやかにではあれ一石を投じることができればと思っての決断だった。

とはいえ、本書はやはり、マノヴィッチ自身が身をもってくぐり抜けてきた1980年代から90年代にかけての現象と議論の集大成といった性格が強く(その印象は、2013年に刊行されたマノヴィッチの新著『ソフトウェアが指揮を執る(Software Takes Command)』でも変わらない)、2000年代以降も急速に変化し続けているメディア環境に対応した理論構成はなされていない。マノヴィッチを叩き台として、マノヴィッチを乗り越えるような仕事がなされ、あるいは紹介されることが待ち望まれる所以である。(堀潤之)

堀潤之(訳)
レフ・マノヴィッチ(著)『ニューメディアの言語 デジタル時代のアート、デザイン、映画』
みすず書房、2013年9月