PRE・face

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門林岳史

『REPRE』vol.18をお届けする。表象文化論学会では第7回大会(2012年7月7、8日)で、アニメーション研究者のトマス・ラマール氏、アニメーション作家の山村浩二氏をお招きして、シンポジウムとスクリーニングのイベント「リヴォルヴィング・エボリューション──アニメーション表象の新世紀」を開催し、学会誌『表象』第7号でも特集「アニメーションのマルチ・ユニヴァース」を企画した。『REPRE』本号では、この『表象』特集号の刊行にあわせて、小特集「アニメーションの生態学」を準備した。

宮崎駿作品をはじめとする日本の劇場アニメに寄せられる世界的な注目、いまや現代日本を理解するにあたって欠かせない要素になったいわゆるオタク文化、しかしそれだけでなく、『アバター』や「ハリー・ポッター」シリーズのようなハリウッドで製作される「実写」映画の大作がもはや事実上デジタル・アニメーション作品になっている現状、現代美術におけるヴィデオ作品に浸透しているアニメーション技術、そしてもちろん、それらの背後で脈々と制作され続けている実験的なアニメーション作品の系譜。しかし、それらをはたして同じ事象として語ることは可能だろうか。本特集は、このように日本と世界においてさまざまなかたちで制作され流通しているアニメーションに、「生態系」という切り口から多角的かつ俯瞰的な視点を与えたい。アニメーションの一語に包摂される様々なジャンルや作品、そして、それらをめぐる言説群が、それらの内部で、そして隣接する文化事象とのあいだで織りなしている交渉(と没交渉)の布置にささやかな光をあてるのが、その目論見である。

そのために本特集では、『表象』特集号を企画したアニメーション研究者土居伸彰氏に世界各地で開催されているアニメーション映画祭の状況とそこから見えてくるアニメーション研究の課題について話を伺い、他方では海外における日本アニメ研究の現状について、座談会「日本アニメのメディア・エコロジー」で討議するとともに関連する論考と報告(秋菊姫、増田展大)を収録した。それに加えて映画研究から寄せられるアニメーションへの注目(畠山宗明)、前衛美術の系譜におけるアニメーションの位置(福住廉)についての論考を掲載することで、「アニメーション」という語がはらむ多様性に見合った多角的な視点を確保することができたと自負している。もちろん、これは小さな一歩にすぎないが、批判的なアニメーション研究の構築に向けて、『表象』特集号とあわせてささやかな寄与となることを期待している。

門林岳史(広報委員長)


REPRE18目次

小特集 アニメーションの生態学

・インタビュー:土居伸彰「アニメーション映画祭の現場から」

・座談会:マーク・スタインバーグ+アレクサンダー・ツァールテン+門林岳史「日本アニメのメディア・エコロジー」

・研究ノート
畠山宗明「「動きから考える」──アニメーションと映画研究」
福住廉「アニメーションと前衛美術──小林七郎の歩みから」
秋菊姫「日本学とアニメ研究──再帰性の原点」
増田展大「Mechademia in Seoul消息」

トピックス

・第4回表象文化論学会賞受賞者
・写真パネル展示「ムネモシュネ・アトラス──アビ・ヴァールブルクによるイメージの宇宙」
・東京発「世界文学」の試み──国際研究集会「グローバル化時代の世界文学と日本文学―新たなカノンを求めて」
・「フィギュール」とは何か──ブリュノ・クレマン連続講演会報告
・国際シンポジウム「文化財の保存と科学技術──日本とイタリアにおけるデジタル映像化の現状と未来」
・シンポジウム「映画、建築、記憶」
・ジョジョの奇妙な超越論的座談会

研究ノート

井上康彦「撹乱する女たち──ロザリンド・クラウス『独身者たち』について」
調文明「御真影試論:モノとしての御真影──奉掲位置と変色現象に注目して」
武田宙也「ポイエーシスとプラクシスのあいだ──エリー・デューリングのプロトタイプ論」

新刊紹介