新刊紹介 | 翻訳 | 『経済の未来 世界をその幻惑から解くために』 |
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森元庸介(訳)
ジャン=ピエール・デュピュイ(著)
『経済の未来 世界をその幻惑から解くために』
以文社、2013年1月
著者みずから提唱する「賢明な破局主義」の視点から、今日における経済合理性の瞞着的な支配を解くための方途を探る書物。第1章は、18世紀における経済(学)の擡頭をポスト宗教戦争という歴史的な文脈に置き、それが本来的には人間の自己破壊に対する抑制装置として見出された事実を指摘する。第2章では、その機能不全の原因を未来への「不信」に見定めたうえで、取り戻されるべき未来のありかたが「自己超越」(システムが自己の存立を保証する外在性を仮想的に構築するプロセス)と「不幸な予言」(予言された出来事の阻害を目的とする逆説的な予言)という理論モデルをつうじて描き出される。「命に値段はない」という常套句を問い直して「経済合理性」のデッド・ポイントを指摘する緊密な第3章を経て、最終第4章は、そうした合理性に回収されない「経済理性」の水準における選択の価値と意義を、ヴェーバーの再解釈とともに提示する。全般をつうじて抽象度が高いことは確かであるが、抽象性は現実性と背反するわけではない。その自明性が揺らぎつつある人間の「生存」の意味と条件を改めて考えるにあたって、幅広い読者の関心に応えるものがあるはずだ。(森元庸介)
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