新刊紹介 編著/共著 Althusser and Law

Yoshiyuki Sato
Laurent de Sutter, ed.,
Althusser and Law
Routledge, February 2013

Althusser and Law は、法理論の専門家であるロラン・ド・シュッテールによって企画、編集された。アルチュセールについては、そのイデオロギー理論がとりわけ有名であり、哲学から文化研究まで様々な局面で引用され、解釈されているが、本書はアルチュセール理論をイデオロギー理論との関係においてではなく、法との関係において再評価しようとするものである。本書の執筆者は、ロラン・ド・シュッテールや、英語圏を代表するアルチュセール研究者であるウォーレン・モンタグ、そして多くの若手研究者から構成されている。シュッテールによる本書の紹介文と、本書の目次を以下に示しておく。

Althusser and Law は、ルイ・アルチュセールの哲学におけるとりわけ法の位置を主題とした最初の本である。現代の左翼的議論におけるアルチュセール哲学の重要性の増大によって、理論的であると同時に実践的で政治的な理由から、彼の法概念に関する持続的な考察は、かつてなく不可欠なものとなっている。アルチュセールが「国家のイデオロギー諸装置」と呼んだものの一形式として、労働法の破壊から特許法の濫用まで、公法の私物化から進行する商法のヘゲモニーまで、人権に関する言説から司法機関の実践まで、法は政治的闘争の最前線に位置している。アルチュセールは、これらの闘争を理解するための助けとしていまだ有用なのだろうか。彼は、法がどのように生産されるか、そして法がどのように使用され悪用されるかについて、私たちに何かを教えてくれるのだろうか。この論集は、法に関するアルチュセールの考えが、かつてなく重要であり現代的であることを証明するものである。実際、本書の寄稿者たちは、アルチュセールが、現代の生における法の位置について新たで汲み尽くしがたい展望をもたらしてくれる、と論じている。」(ロラン・ド・シュッテール)

    Introduction: Laurent de Sutter

  1. The threat of the outside: Althusser’s reflections on law: Warren Montag
  2. Althusser on laws natural and juridical: William S. Lewis
  3. Monarchy, despotism, and Althusser’s ‘linguistic trick’: materialist reflections on the literary reproduction of Montesquieu’s ‘fundamental law’: David McInerney
  4. Althusser’s paradoxical legal exceptionalism as a materialist critique of Schmitt’s decisionism: Juan Domingo Sánchez Estop
  5. Prohibitionary law as apparatus of subjectivation: Butler’s Psychic Life of Power and Althusser: Yoshiyuki Sato
  6. Althusser in Avatar: comparative law as a science and the haunting of the subject: David Marrani
  7. Rereading Capital: notes towards an investigation of law, politics and pensions: Adam Gearey
  8. The Althusser fact: for madness creates no right – on the secularization of law: Dimitra Panopoulos
  9. Aleatory materialism and speculative jurisprudence (II): for a new logic of right: Kyle McGee

目次からもわかるように、本書はアルチュセール理論と法との関係を、アルチュセールの法理論(とりわけ『再生産について』における)の批判的読解、モンテスキュー、スピノザ、マキャベリ、ロック、ルソー、シュミットらの法理論とアルチュセール理論の関係、バトラーのアルチュセール解釈における法の位置、法と経済の関係、そしてアルチュセール晩年の理論である偶然性唯物論と権利の関係など、多様な観点から解釈している。本書は、法理論のみならず、アルチュセール理論のまったく新たな解釈、新たな使用のために、一つのユニークな貢献をもたらすであろう。(佐藤嘉幸)