新刊紹介 | 編著/共著 | From Postwar to Postmodern, Art in Japan 1945-1989: Primary Documents |
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Doryun Chong, Michio Hayashi, Kenji Kajiya and Fumihiko Sumitomo (eds.).,
From Postwar to Postmodern, Art in Japan 1945-1989: Primary Documents
New York: Museum of Modern Art, December 2012
ニューヨーク近代美術館は、主に非欧米諸国の美術の動向や歴史に関する資料を英語で提供するアンソロジー「一次資料集」(Primary Documents)のシリーズを刊行している。中東欧(2002年)、アルゼンチン(2004年)、ベネズエラ(2008年)、スウェーデン(2008年)、中国(2010年)に続いて刊行されたのが、戦後日本美術に関する本書である。
編者は、ドリュン・チョン(ニューヨーク近代美術館絵画・彫刻部門アソシエート・キュレーター)、林道郎(上智大学国際教養学部学部長)、加治屋健司(広島市立大学芸術学部准教授)、住友文彦(キュレーター、アーツ前橋新館長)の4名。1945年から1989年までの戦後の昭和時代を5つの章に区分し、美術の動向を中心としつつ、それと関連するデザイン、建築、写真の各分野にも触れながら、主要な美術批評、芸術家の文章、座談会などを計85本収録する。各章の題名は、1章「1945–57年 戦後の復興 占領から冷戦まで」、2章「1957–64年 戦後から国際復帰まで」、3章「1964–70年 前衛以後 拡張する場」、4章「1970–80年 ポストモダンに向けた再構築」、5章「1980–89年 ポストモダニズムとグローバルな交渉」で、章ごとにイントロダクションを付す。重要なトピックに関しては、日米の研究者が執筆したコラムが23本収録されている。冒頭には、チョンによる本書の概要に加えて、ハリー・ハルトゥーニアンによる戦後日本史の概説があり、巻末には1989年以後の展開に関するあとがきと中島理壽作成の年表が掲載されている。
戦後日本美術の論集は、『美術手帖』や『FRAME』等の雑誌の企画として作成されたことはあったが、単行本として刊行されたのは、国内外を通して本書が初めてである。北米を中心に、戦後日本の芸術や文化に対する関心が高まりつつある今日、戦後日本美術の主要な議論が英語で紹介されることの意義は計り知れない。戦後日本美術に関する日本国内での議論にも、大きな一石を投じるだろう。(加治屋健司)