新刊紹介 | 編著/共著 | 『スティーブン・スピルバーグ論』 |
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大久保清朗(分担執筆)
南波克行(編)
『スティーブン・スピルバーグ論』
フィルムアート社、2013年2月
スピルバーグ。あまりに有名であるがゆえに、かえって語られることのなかったこの作家を真っ正面から論じる試みである。いや論じられなかったわけではないが、それはかならずといっていいほど批判の対象として、せいぜい保留つきの肯定であった。だがそれでいいのか。「序文にかえて」で編者の南波氏が述べるように、「ひとまず肯定的な眼差しのもとに、ひとりの映画作家について、愛情をこめて語りきる」(9頁)という、当たり前といえば当たり前の作業の、これはささやかではあるが貴重な成果であろうと思う。
1970年代初めにデビューしてから監督生活40年を越えるこの映画作家を貫くさまざまな主題群(子供、文芸、歴史、戦争、SF、製作……)について7人の論者による9本の論考、さらに5つのコラムと2本のスピルバーグ自身の対談・鼎談によって構成されている。それぞれの論考について具体的な紹介をする余裕はないが、各論考はその意図されて書かれたものでないにもかかわらず、きわめて緊密に連繋しスピルバーグ像を作りあげている。本書を手にとられた方が、スピルバーグ映画との幸福な出会いを果たすことを願わずにはいられない。(大久保清朗)
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