新刊紹介 | 単著 | 『アイスランド・グリーンランド・北極を知るための65章』 |
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北村紗衣、ほか(分担執筆)
小澤実・中丸禎子・高橋美野梨編
『アイスランド・グリーンランド・北極を知るための65章』
明石書店、2016年
定評あるエリアスタディーズの140巻目にして、ようやく到達した極北の世界。氷の割れ目から顔をのぞかせるイッカククジラの群れを映し出す表紙が物語るように、この地域といえば、厳しい気候と豊かな自然を思い浮かべる向きがほとんどではなかろうか。もちろん、それは間違っちゃいない。でも、それだけじゃない。本書は、この極北の世界の様々な側面を掘り下げて紹介した、初めてづくしのアンソロジーだ。
同じシリーズと比べて本書の特色を挙げるとすれば、文芸に強いところ。中世アイスランドの文芸に始まり、ヴェルヌやトールキンにとっての極北、ノーベル賞受賞者から推理小説まで。日本での極北文芸の受容や、逆にアイスランドでの村上春樹の受容、グリーンランドやフェーロー諸島の文学事情までも。まさにこの極北を舞台とするヴァイキング活劇たる『ヴィンランドサガ』の作者、幸村誠さんも、自分の作品に対する思いをぶつける一文を寄せている。どの章も、本書でしか読めない情報が満載だ。
定番のアメリカやヨーロッパとは別の世界の貌を見たい。そう思うのであればぜひ本書を手に取ってもらいたい。それが編者一同の願いです。(小澤実)
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