新刊紹介 | 単著 | 『日本文化に何をみる? ポピュラーカルチャーとの対話』 |
---|
東谷護、ほか(共著)
『日本文化に何をみる? ポピュラーカルチャーとの対話』
共和国、2016年4月
一般的に、「日本文化」に抱かれるイメージは、禅、茶の湯、能、歌舞伎といった伝統という言葉で括ることが出来るものだろう。あるいは近年、海外発で話題となったクールジャパン、さらにはカワイイなどといったカタカナで表されるものと思われる。しかしながら、本書はこれらの範疇には収まらない。収められた論考とエッセイの鍵語をあげてみると、女子プロレス、ジャズ喫茶、反戦フォーク、歌謡曲、小林秀雄などである。これらは、日本のポピュラーカルチャーといって差し支えないだろう。本書では、こうしたポピュラーカルチャーを扱いながら、日本文化を考究する新たな視点の獲得を目指している。また、著者たちの生活基盤などの背景から、日本と海外という二項対立的な図式に捉えられてしまうかもしれないが、そういった「ソトからみたニッポン」という短絡的な図式に回収されてしまうような研究を著者の誰一人、進めていないのも本書の特色であり、魅力でもあろう。
本書を世に問う契機となったのは、成城大学文芸学部創設60周年記念事業の一環として、2015年1月に開催された公開シンポジウム「ニホンから/へのまなざし」の冬期シンポジウム「日本文化に何を見た?」であった。本書は、小さな大学でのささやかなシンポジウムからの新たな学問領域開拓への挑戦でもある。 (東谷護)
[↑ページの先頭へ]