新刊紹介 | 単著 | 『理論で読むメディア文化 「今」を理解するためのリテラシー』 |
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鈴木潤、谷島貫太、ほか(分担執筆)
松本健太郎(編著)
『理論で読むメディア文化 「今」を理解するためのリテラシー』
新曜社、2016年5月
私たちは、刻々と変容しつづけるメディア・テクノロジーに囲まれた、「流動的」とも言いうる世界を生きている。本書は、そうした状況のなかで私たちがつくりだし、そして私たちを支えているメディア文化の構造を捉えるための新たな視点を、読者に提供することを企図している。本書の各章が、何らかの理論的言説をとりあげ、その「切れ味」を試すように作品や事象を分析する、という形式を統一させているのは、そのためである。
各章の分析対象はデジタル・イメージや、クレジットカード、村上春樹、ゆるキャラ、お笑い番組など、多岐にわたる。「テクノロジー」、「表象」、「社会」をキーワードにした三つのパートから成る本書を通読すると、私たちの生活・文化・思考様式と、メディア・テクノロジーとの密な、そして錯綜した関係を改めて認識させられる。そして、ベルナール・スティグレールや、ジル・ドゥルーズ、ローラ・マルヴィ、イェスパー・ユールなど、各章でとりあげられる理論的言説は、具体的な題材の分析過程をつうじて、その有効範囲の内と外との両方を照射することになる。著名な理論的言説を、絶え間なく変化しつづける「今」を理解するための足掛かりとしながらも、それに頼りきるのではなく、そこから新たな視座を獲得してみせる本書は、メディア研究の入口としても、「思考する」という行為の見本としても、すぐれた一冊になりえている。(鈴木潤)
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