新刊紹介 | 編著/共著 | 『21世紀の哲学をひらく 現代思想の最前線への招待』 |
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柿並良佑、鯖江秀樹、清水知子、ほか(分担執筆)
齋藤元紀、増田靖彦(編著)
『21世紀の哲学をひらく 現代思想の最前線への招待』
ミネルヴァ書房、2016年5月
本書は、13名の中堅・若手研究者の論文からなる哲学論集で、各論文は二十世紀哲学が現代にどのように受け継がれているのか、その思想的展望を明らかにしている。「あとがき」でも触れられているように、もともと、『概説 現代の哲学・思想』(2012)の続編として企画されたのが本書である。前著と比べてみると、現象学や実存主義、解釈学といった哲学潮流を概観するにとどまらず、ナンシーやカヴェル、バトラーやアガンベン、ホネットやチャルマーズなど、現代を生きる思想家たちが、ジェンダー、芸術、権力といった古くて新しい課題といかに向き合ったのかを、テクストの緻密な分析と平明な文体によって説得的に論じていることに本書の特徴がある。フロイト、ウィトゲンシュタイン、ベンヤミン、フーコーなど、前世紀の巨星たちをどう理解し、開示すべきか。各論文は、その具体的な方途を明らかにしてくれる。
全体は三部からなり、「フランス・イタリア哲学」、「ドイツ哲学」、「英米哲学」と、地理言語別に構成されているが、いくつかの共通するテーマや問題圏が浮上してくる。例えば「政治」、「言語」、「自我・主体」がそれであろう。これらの概念を自明のものとせず、その内に含まれている関係性の諸様態――対立、癒着、亀裂、ズレ――を果敢に問い直し、思考しようとする現代哲学の身ぶりを、本書の随所に見いだすことができる。(鯖江秀樹)
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