新刊紹介 | 編著/共著 | 『人形の文化史 ヨーロッパの諸相から』 |
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香川檀(編著)
『人形の文化史 ヨーロッパの諸相から』
水声社、2016年4月
人形は、「にんぎょう」と読むと他愛ないものを思わせ、「ヒトガタ」と読むと禍々しいものを思わせる。玩具から呪物まで多彩な顔をもつ人形を、宗教・民俗・文学・芸術などヨーロッパ文化の諸領域からとりあげたのがこの本。第1部「〈人形幻想〉の根源をさぐる」では、キリスト教の聖像や、民間伝承のなかの人形、そして古代にまで遡る自動人形(オートマタ)の歴史など、西欧文化の基層に光をあてる。第2部「モダニズム文学にみる人形」では、19~20世紀のドイツ・オーストリア文学(ホフマン、マイリンク)やフランス文学(リラダン)に描かれた自動人形や人造人間を解読する。第3部「危機の時代の人形愛」は、20世紀になりファシズム・ホロコーストの嵐が吹き荒れるなかで、人形がおびる隠喩性を思想と文学に探り、また前衛芸術の身体表象の問題としてベルメール人形を論じる。こうして学際的な文化研究のテーマとして人形をクローズアップしてみせたのが、本書の功績だと、少しだけ自負している。だが、これはあくまで入門書。「人形の表象文化論」は、ここからスタートして若い研究者の手に委ねたいと思っている。(皆さんのことですぞ!)(香川檀)
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