新刊紹介 | 単著 | 『民主主義を直感するために』 |
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國分功一郎著
『民主主義を直感するために』
晶文社、2016年4月
本書『民主主義を直感するために』には、著者の國分氏が2010年以降に政治や社会について発表したエッセイや書評、対談、ルポルタージュが収められている。とりあげられているトピックは「パリの街で出会ったデモ」から「小平市都市計画道路反対の住民運動」、「B級グルメ」から「辺野古の基地建設反対運動」まで多岐にわたる。本書は、民主主義の危機が叫ばれる昨今の社会状況下に生きるわれわれにとって、「役に立つ素材」を提示してくれるある種の「実用書」であるといえる。
「民衆が権力を作る政治体制」である「民主主義」を直に感じるために、何か特別なことは必要ない。本書で國分氏が自身の実践と経験をもとに語る示唆に富んだ「政治」の話は、「デモに行ってその雰囲気を眺めてみること」であったり、「自分の嗜好品について考えてみること」であったり、「自分の街の住民投票にかかわってみること」であったりする。読者であるわれわれの生活に置き換えて思考しやすい「政治」の話、これが本書が提示してくれる民主主義を直感するための「素材」である。本書は、読者自身の生活のどこに「政治」が含まれているのかを考えるヒントを与えてくれる。
「世間話のトピックとして政治の話は避けるのがマナー」という空気があり、日常的に政治的な問題から距離をとるように促されることも少なくない日本において、いかにして「民衆」は「民主主義を直感する」ことができるのか。本書を通じて読者は、國分氏の「素材」を用いて、民主主義を直感するための自分なりの「方法」を作りだし、自身に身近なこととして「政治」について考えてみたくなるだろう。(渡邊雄介)
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