新刊紹介 | 単著 | 『シェイクスピア 人生劇場の達人』 |
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河合祥一郎(著)
『シェイクスピア 人生劇場の達人』
中央公論新社、2016年6月
2016年はウィリアム・シェイクスピアの没後400周年の年であり、さまざまな記念イベントが予定されている。本書はそのタイミングにあわせて刊行された新書である。わかりやすく、かつシェイクスピアに関する基本的な部分をおさえた入門書になっている。
前半の三章は各種の史料などをもとに、シェイクスピアの人生や時代背景を解説している。初期近代イングランドの時代の劇場の様子や、シェイクスピアと故郷ストラットフォード・アポン・エイヴォンのかかわりなどについてもコンパクトにまとめられている。後半の四章はテクストの解釈を通じてシェイクスピアの作品世界を浮かび上がらせており、作家が生きた時代の哲学や思想にからめてシェイクスピア劇の醍醐味を明快に記述している。
本書はシェイクスピアについての書籍であるが、こうしたわかりやすく明快な記述を可能にしているのはシェイクスピアに限らない初期近代イングランド演劇一般に関する該博な知識である。たとえば変装などのプロットを扱った第五章では、著者が独自に集計したエリザベス朝の戯曲285本についてのデータの分析が登場する。他の劇作家や同時代の思想などを視野に入れることで、本書は読者にシェイクスピアの周りに広がる広い世界を垣間見せてくれるものとなっている。(北村紗衣)
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