新刊紹介 | 編著/共著 | 『マンガ文化55のキーワード 世界文化シリーズ』 |
---|
三輪健太朗(ほか分担執筆)
竹内オサム、西原麻里(編著)『マンガ文化55のキーワード 世界文化シリーズ』
ミネルヴァ書房、2016年2月
タイトルが示す通り、「マンガ」という文化の諸相を55項目にもわたるキーワード別に概説した参考書である。各項目は4ページずつと紙幅も限られており、また55項目を総勢27名の執筆者によって担当しているため、文体やスタンス、専門性の度合いなど、項目ごとにまちまちな面もある。しかしだからこそ、マンガ論で現在扱われている様々なトピックを総覧し、その多様性を体感できるという意味で、「マンガ研究」というフィールドそのものへの入門書として読めるだろう。
書名にある「マンガ文化」というより、むしろ「マンガ研究」への入門書という書き方をしたのは、本書の出版が、近年の大学におけるマンガ研究の進展と拡大を踏まえてこそのものだからである。そのことは、55項目のうち多くが、大学や研究センター、ミュージアム等に所属する研究者によって担われていることにも示されている。学術的な場でのマンガ研究は、ここ十数年でようやく活発化してきたところであり(本書の編著者である竹内オサム氏は数少ない例外であり、1970年代から大学でマンガ研究に従事している)、十数年前までは、類書が企画されたとしても執筆者の肩書きは大きく異なっていたはずである。
なお、本書でいう「マンガ文化」はあくまでも「日本の」マンガ文化であり、「外国マンガ」は55項目のうちの一つとして、「アニメ」「実写映画」「ゲーム」とともに、「マンガと他メディアとの相関」と題された最終章にくくられている。本書は「世界文化シリーズ」の別巻として刊行されているが、たとえば「アメリカマンガ文化55のキーワード」や「フランスマンガ文化55のキーワード」を編める日が来ること。今後のマンガ研究の大きな目標の一つがそこに見定められるかもしれない。(三輪健太朗)