第9回研究発表集会報告 関連企画2:市山流 踊りと芸妓のエキシビジョン(協力:新潟大学地域映像アーカイブ)

第9回研究発表集会報告:関連企画2:市山流 踊りと芸妓のエキシビジョン(新潟大学地域映像アーカイヴとの共催)|榎本千賀子(新潟大学人文学部)

2014年11月9日(日) 11:00-12:00
新潟日報メディアシップ20階ギャラリースペース

関連企画2:市山流 踊りと芸妓のエキシビジョン(協力:新潟大学地域映像アーカイブ)

新潟はかつて、日本海を行く北前船の集うにぎやかな港町であった。戦後発展した新潟駅周辺の繁華街を抜け、信濃川にかかる万代橋をわたった先にひろがる古町は、この新潟港の経済発展を背景に栄えた花街である。古町には明治後期から昭和初期の木造建築が多く残っており、古くは江戸期より続く老舗料亭が今も営業を続け、お座敷には古町芸妓が華を添えている。

2008年に活動を開始した新潟大学地域映像アーカイブは、新潟地域の生活のなかから生まれた映像を発掘、調査、整理、保存し、デジタル化した映像を展覧会や上映会、ワークショップ等のかたちで活用してゆくという活動を行っている。本イベントは、この地域映像アーカイブの試みを続ける新潟大学人文学部と新潟日報社、表象文化論学会の共催により、江戸後期から古町を拠点として活動している日本舞踊の流派、市山流とその芸を紹介するものであった。大阪の歌舞伎役者・振付師を源流とする市山流は、古町芸妓の芸と新潟の文化を長らく支え続けてきた。地方の宗家として120年以上の歴史を誇る日本舞踊の流派は全国にも類がなく、市山流は現在では新潟市無形文化財にも指定され、Noismをりゅーとぴあのレジデンシャルカンパニーとするなど舞踊に力を入れた文化支援政策を行っている新潟市にとっても重要なものとして位置づけられている。

イベント会場となった新潟日報メディアシップでは、「にいがた 市山流—その踊りと芸妓の魅力」展が開催中であった。この展覧会は、戦前の市山流舞踊会「研踊会」の記録写真と、市山家で別々に発見された昭和38年の「市山七十郎研踊会」舞台記録8ミリフィルムおよび録音について映像と音の同期を試みた復元映像の上映を中心として、市内の高級老舗料亭である行形亭(いきなりや)で戦前に撮影された芸妓たちの舞台裏を映した映画、県の観光課所属の写真家、中俣正義と新潟日報社による1950年代から60年代の堀埋め立て前後の古町界隈の写真などを紹介し、観光化された花街や芸妓のイメージにとどまらない表現者・生活者としての芸妓や市山流の芸、生活の場として変化してゆく古町の姿を伝えることを目指していた。本イベントはこの展覧会と連携しつつ、新潟の変化とともに現在に生きる市山流の芸を紹介することを目論んで企画されたものであった。

エキシビジョンは現在の市山流家元、七代目市山七十世による解説から始まり、市山流門下生である古町芸妓によるうたと踊りへと続いた。季節に合わせた「菊月」を長く芸歴を積んだたまきが披露し、続いて一定の修練を経た一人前の芸者「留袖さん」である華乃、鮮やかな衣装を身につけた新人芸者「振袖さん」である和香と千秋の三人が、民謡の「おけさ」をお座敷向けに洗練させた「おけさづくし」(佐渡おけさ、新潟おけさ)、華やかな「ふるまち音頭」を踊った。地方は芸に定評のある延子(唄)と福豆世(三味線)がつとめた。学会参加者のみならず一般市民が多く参加し、会場は150人の聴衆で賑わった。

榎本千賀子(新潟大学)