新刊紹介 編著/共著 『ポピュラー音楽から問う 日本文化再考』

東谷護(編著)
『ポピュラー音楽から問う 日本文化再考』
せりか書房、2014年10月

本書は、編者が企画制作に関わった公開シンポジウム「日本のポピュラー音楽をどうとらえるか-グローバルとローカルの相克-」を基に論文集として発展させたものである。なお、すでに刊行されている報告書(ISBN978-4-906845-01-9)は、シンポジウム当日の雰囲気を伝えることに重きをおいている中間発表的なものであるのに対して、論文集として刊行した本書は完成版という位置付けである。

ポピュラー音楽にはいくつかの誤解がつきまとう。ここでは一つの誤解をみてみることにしよう。ポピュラー音楽は流行り廃りが激しいという側面ばかりに目が向けられてしまい、「いま」ヒットしているものだけがポピュラー音楽と認識されてしまうことがある。それゆえに、ポピュラー音楽は一過性のものとして、ヒット曲はいずれ消費期限を迎えてしまえば、忘却の彼方へと押しやられる。そして、「昔の」ポピュラー音楽を研究対象とすることによって、何が見えてくるかなど考えもしなくなってしまう。

本書では、ポピュラー音楽を研究対象とした先行研究の弱さの一つである、歴史的視点の欠如、印象批評まがいの論考と一線を画すために、日本のポピュラー音楽文化に対して歴史的視点を持って研究を進めている気鋭の研究者の論考を集めた。これらの論考の扱う主題は、それぞれ異なるものだが、論考の集積がポピュラー音楽だけにとどまらず、現代日本の文化への新たなまなざしを提供するものとなるであろう。(東谷護)

東谷護(編著)『ポピュラー音楽から問う 日本文化再考』