新刊紹介 | 編著/共著 | 『大阪万博が演出した未来 前衛芸術の想像力とその時代』 |
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江藤光紀(共著)
『大阪万博が演出した未来 前衛芸術の想像力とその時代』
青弓社、2014年8月
大阪万博は6000万人以上の観客を集めた。当時の国民の実に半分以上が訪れた勘定で、シンボルタワーとなった太陽の塔に象徴されるように、この時代の日本人の集合的な記憶となったイヴェントだ。
大阪万博には当時最先端を走っていたアーティスト、建築家、作曲家、デザイナーたちが数多く参加した。近未来世界を提示する万博のパヴィリオンを彩っていたのは前衛芸術だった。しかし近年に至るまでこの事実が顧みられることはあまりなかった。
戦後の復興期を経て60年代はジャンルを問わずアヴァンギャルド芸術は熱気に満ちていた。70年代に入ると日本社会は高度経済成長によって変質し、それとともに前衛芸術も熱気を失っていく。万博とはその岐路にある一大イヴェントなのである。万博後、反体制を掲げた者たちが失速する一方、万博に参加した者たちは日本を代表する芸術家としてオーソライズされていく。だが体制の祭典である万博への参加は、彼らにとっても振り返りたくない過去であった。後年、岡本太郎がメディアによる戯画的なイメージを自ら生き続けたのに象徴されるように、万博が演出した未来の記憶は前衛芸術というよりはむしろサブカルチャーの領域で強く生き続けることになる。(江藤光紀)
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