新刊紹介 | 編著/共著 | Samuel Beckett and Pain |
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対馬美千子(共編)
Samuel Beckett and Pain
Amsterdam-New York: Rodopi, 2012
Samuel Beckett and Pain は、ベケット作品における痛みをテーマとする10本の論文から成る論集である。執筆陣は、イギリス、アメリカ、カナダ、日本の主要なベケット研究者である。ベケットは、自らの人生において身体的苦痛のみならず心理的苦痛を経験しているが、彼は、人間の生における苦痛は避けられないものであると考え、そのような苦痛を作品創造のためのインスピレーションの源として受けいれ、深く探っていくことにより困難で過酷な芸術の創造、実践、パフォーマンスの過程の深奥を究めようとした。本書は、文学、文化に関わる分野における痛みについての最近の研究動向を踏まえた上で、これまで散発的にしか言及されてこなかった主題であるベケット作品における痛みの様々な側面を考察する。
本書で論じられるトピックには、ベケットの美学と痛み、喪失とトラウマとしての痛み、痛みとその緩和、限界経験における痛み、アーカイブとしての痛み、日常の生や言語経験における痛みが含まれる。また本書の特徴は、文学、演劇、芸術、哲学、精神分析の分野を横断する、複眼的で学際的なパースペクティヴにもとづくという点にある。(対馬美千子)
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