新刊紹介 | 編著/共著 | 『絵を書く』 |
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千葉文夫(分担執筆)
『絵を書く』
水声社、2012年7月
『絵を書く』と題された本書は、マリアンヌ・シモン=及川を中心に2008年から2011年にかけて日本学術振興会の補助金助成を得て行われた日仏合同の研究活動の成果を示すものである。19-20世紀フランスにおける文学と絵画の関係を中心的主題とするこの共同研究にかんしては、本書には収録されてはいないが、アニー・ルノンシア、セゴレーヌ・ル・マンなどによる貴重な寄与があった。
「描く」ではなく「書く」という動詞の選択がおのずから示すように、本書に収められた論考は多かれ少なかれ、文学的テクストに見出されるイメージ記述の検討に出発点をおいている。扱われる作家はフロマンタン、ベルトラン、ゾラから現代詩人クリストフ・ラミオ・エノスまで、テクスト&イメージ研究の古典的主題に連なるものもあれば、11人の現代アーチストをめぐるベルナール・ノエルのテクストを紹介/分析する試みもある。本書に収録された個々の論考について言及する余裕はないが、ヴァレリーとデッサン、レリスと自動記述、バルトと写真のかかわりなどの扱いが示すように、書くというプラクシスにともなう「不純」で「不透明」な要素が期せずして浮かび上がるしかけになっていることを指摘しておきたい。(千葉文夫)
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