新刊紹介 | 編著/共著 | 『共感覚から見えるもの アートと科学を彩る五感の世界』 |
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北村紗衣(編著)
『共感覚から見えるもの アートと科学を彩る五感の世界』
勉誠出版、2016年5月
「共感覚」とは、ひとつの刺激から二つ以上の感覚が発生する現象である。例としては、音を聴くと色が見える、文字を見ると色を感じるなどといったものがあげられる。こうした感覚を日常的に経験している者も存在し、共感覚者と呼ばれている。共感覚はオカルトや超能力といったものと結びつけられやすく、体系的な学術研究の対象となることは少なかったが、近年、医学や脳科学などの分野で注目されはじめている。
本書は主に人文学や芸術といった視点から共感覚に取り組んだ16編の論考をおさめている。哲学や芸術の分野においては長きにわたり共感覚的なものへの関心が払われてきたが、一方で学術研究は散発的にしか行われておらず、各分野の研究がうまく接続されてきたとは言えない。本書はこうした状況を改善すべく、様々な人文学における共感覚研究、そして人文学と科学分野における共感覚研究の橋渡しを目指すものであり、共感覚を主題に学際的な視点から日本語で編まれた論集としてはおそらく最初の例である。アルチュール・ランボー、エルンスト・ユンガー、宮沢賢治、アレクサンドル・スクリャービンといった芸術家の研究から言語学的分析まで多様な分野の論考を収録している。
本書のきっかけとなったのは2009年7月5日に京都造形大学で開催された表象文化論学会大会における共感覚パネル である。このパネル記録集として北村紗衣編『共感覚の地平-共感覚は共有できるか?』(2012)がウェブで無料公開されており、これが出版社の目にとまったことで刊行につながった。(北村紗衣)
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