新刊紹介 | 翻訳 | 『もし、シェイクスピアがスター・ウォーズを書いたら まこと新たなる希望なり』 |
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河合祥一郎(訳)
イアン・ドースチャー(著)『もし、シェイクスピアがスター・ウォーズを書いたら まこと新たなる希望なり』
講談社、2015年9月
『もし、シェイクスピアがスター・ウォーズを書いたら まこと新たなる希望なり』は、映画『スター・ウォーズ エピソードⅣ』のスクリプトを舞台用の台本に直したのみならず、それをすべてシェイクスピアばりの弱強五歩格(アイアンビック・ペンタミター)の韻文で書き直したものだ。始まりと終わりのコロスは、なんとソネット形式で押韻している。驚くのは形式だけではない。オビ=ワン・ケノービがハムレットの亡霊よろしく「わしを忘れるな」とルークに語り、ルークは頭蓋骨ならぬストームトルーパーのヘルメットを手にして、「哀れストームトルーパーよ」と嘆く。読んでいくうちに、スター・ウォーズの世界がシェイクスピアの世界と非常に近いことがわかってくるのである。
最も重要なのは、フォースだ。不安や疑念を捨て、肉眼で見えることにも頼らず、自分の心に集中しなければフォースは使えない。これはシェイクスピアにおけるfaith(信念)の使い方とそっくりなのだ。肉眼を頼らないということは、シェイクスピアでは心眼で見るということだ。心眼で見れば真実が見える。そして、己の感性に集中し、己に信をおくことでパワーが生まれる。心に強く思い描くことがリアルになるのだ。これは文学の根本であると同時に、私たちの人生を形づくる力でもある。(河合祥一郎)
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