新刊紹介 | 編著/共著 | 『欧米社会の集団妄想とカルト症候群 少年十字軍、千年王国、魔女狩り、KKK、人種主義の生成と連鎖』 |
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森貴史(ほか分担執筆)
浜本隆志(編著)『欧米社会の集団妄想とカルト症候群 少年十字軍、千年王国、魔女狩り、KKK、人種主義の生成と連鎖』
明石書店、2015年9月
本書は、ドイツ、フランス、スペイン、イタリアなどのヨーロッパ諸国およびアメリカ合衆国において、どのような集団妄想やカルト症候群が誕生し、猛威を振るったのかを概観し、それらの生成をめぐる問題を宗教・社会史的な視点から展望しようと試みた意欲的な労作である。
事例としては、中世フランスのカタリ派、16世紀ドイツのミュンスターの再洗礼派、近代アメリカのクー・クラックス・クラン、トレントの儀礼殺人、ペストと鞭打ち苦行者、人狼裁判、ルルドの奇蹟、ナチスの人種論、ヒトラー・ユーゲントの洗脳とヒトラー演説などである。こうした集団妄想や集団ヒステリーは時代の転換期に多発してきたが、欧米社会のみならず、ほぼ普遍的に世界で発生しているのと同様に、その生成のメカニズムも類似していることを、本書は明らかにしている。
現代の国際社会に視点を移しても、ドイツでのネオナチの台頭、シリアの「イスラム国」の跳梁、日本のヘイトスピーチなどにみられるように、この問題には時代や文化の枠を超越して構造的な類似性が存在している。すなわち、欧米社会の集団妄想やカルト症候群といったテーマはいまだ歴史的にアクチュアルであって、本書は同様の現代での社会問題を考察するさいに一助をなすものだといえよう。(森貴史)
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