新刊紹介 | 翻訳 | 『原子の光(影の光学)』 |
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門林岳史(共訳)
リピット水田堯(著)
『原子の光(影の光学)』
月曜社、2013年6月
1895年、映画が誕生したこの年に、フロイトは無意識という内面のアーカイヴを外側にさらけ出す精神分析の技法を確立し、レントゲンは身体内部の構造を表面に写しとるX線という新たな光を発見した。様々な初期映画もまた、外側へと裏返しになった内面性に向けた想像力をスクリーンの表面上に展開していた。ここれら三つのテクノロジーとともに現れた新たな視覚性は、1945年になって、物質の内部に貫通し、焼き尽くして灰燼と化す原子爆発の破滅的な光としてふたたび姿を現すことになる。半世紀を隔てるこの二つの年号において反復されるこうした新たな書き込み(inscription)と視覚性の様態を、本書は「没視覚性(avisuality)」と名づけ、その隠喩的あるいはアレゴリー的な表現を様々な映画と文学作品および理論的テクストのうちに読解していく。扱われる作品は、「耳なし芳一」、「バベルの図書館」(ボルヘス)、『アーカイヴの病』(デリダ)、「モーセと一神教」(フロイト)、『陰翳礼讃』(谷崎潤一郎)、「透明人間」映画、『砂の女』(勅使河原宏)、『幻の光』(是枝裕和)、『CURE』(黒沢清)など。(門林岳史)
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