新刊紹介 | 編著、翻訳など | 『啓蒙の運命』 |
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Tony Brook、Adrian Shaughnessy(編)『Supergraphics 空間の変容:壁面、 建築、空間のためのグラフィックデザイン』
瀧本雅志(訳)、ビー・エヌ・エヌ新社、2011年8月
スーパーグラフィック(=SG)は、60年代半ばのチャールズ・ムーア設計のシー・ランチあたりを嚆矢として、その後ある期間にわたって注目を集めていったムーヴメント。しかし、そのシー・ランチのSGを手がけたのが誰であったかにしても、これまでさほど問題にされてはこなかった。とはいえ、建物の外壁や内壁に巨大なペイントを施すことで特種な空間性・環境性を展開してゆくSGは、デザインと建築の双方の正史からは軽視されつつも、確かにグラフィックによる建築空間や環境の変容、もしくは建築や環境のデザインにおける平面的イメージ操作において、看過しえぬ地平を開いてきたと言える。そして、そうした2次元的建築あるいは3次元的グラフィックの営みは、旧来の文化ジャンル間の境界が溶融し、グラフィックと建築の差異もまた不分明化してきた昨今、まさにアクチュアルな問題領域として再浮上してきているようだ。本書では、そうした問題意識のもと、今日に至るまでのSGの歴史をトレース。評論文にくわえて、シー・ランチのSGの作者B・S・ソロモンをはじめとする関係者へのインタビューも多く掲載している。何より、60年代から近年のサインネージや環境グラフィックの諸例、そして最新のインタラクティヴなプロジェクションやプロジェクションマッピングによる建物ファサードの電子イメージ化等の事例まで、図版が豊富なのが魅力的だ。ハル・フォスターが言うところのArt-Architecture Complexを歴史的に再検討するうえでも、意外に重要な書籍であるかもしれない。(瀧本雅志)
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